ステンレスタンク熟成と樽熟成、どちらが良いか?
ワインの醸造工程の一つである「熟成」を行う際、ステンレスタンクで熟成させるワインもあれば木樽で熟成させるワインもあります。使用する容器の材質の違いは、ワインにどのような違いをもたらすのでしょうか?
不活性容器
木樽以外でワインを熟成する場合、使われる容器はステンレス、コンクリート、プラスチックなどがありますが、これらの素材は全て不活性素材です。多くの場合、温度管理や衛生管理という点においてより扱い易い、ステンレスタンクが使われます。ステンレスタンクの特徴は、酸化の原因ともなる酸素とワインの接触が出来る限り抑えられること、また木樽とは異なり、熟成中に容器からワインに香りが移らないことです。そのため、生産者が完成品のワインにブドウ本来の素材の味や香りを残したい、フルーティーで溌剌とした軽やかなスタイルにしたいという場合、ステンレスタンクを使用した熟成がより適しているとされます。
木樽
熟成に木樽を使う理由は、微妙に酸素と接する(適度に酸化する)ことでタンニンが和らぐこと、そして木樽の材質や内面の焼き具合に応じて様々なアロマ(バニラ、ブリオッシュ、トースト、ローストしたアーモンドやコーヒー)がワインに移ることです。木樽は、一般的にフランス製かアメリカ製のオーク材が使われます。樽熟成は全てのワインの品質を向上させるわけではなく、骨格のある濃厚なワインにより適した熟成方法と言えます。なお、樽熟成でもたらされるようなアロマを短時間でより低コストで得るために、不活性容器の中にオーク板やチップを投入し熟成させる方法もあります。
どちらが良いのか?
結論としては、どちらか一方の熟成方法が絶対的に良い、優れているというわけではなく、「どのようなワインに仕上げたいのか」という生産者の意向により、ステンレスタンクなどの不活性容器熟成か樽熟成がより適しているのかが判断されます。何れの熟成方法も利点があるので、今日はどんなワインが飲みたいのか?、という気分に応じて選ぶのも楽しいですね。また、美味しいワインに出会った際には、生産地だけでなく、どのように造られたのかまで調べてみると、好きなワインの傾向が掴めるかもしれません。